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そして、終わりのホームルームの時間になっていた。


隣の席の江藤くんは生徒手帳が入れられている胸ポケットに手を当てて、ニコニコと笑みを浮かべている。


先生の話は無事に終わり、チャイムが鳴り始める。


それを聞いてあたしは全身の力が抜けていくのを感じた。


時間が進んだ……!


黒板の上にある時計はちゃんと秒針を進めていて、戻ることはない。


景色がゆがむこともなければ、朝のホームルームが始まることもない。


ごく普通の日常に戻ってこられたことがわかり、涙が出そうだった。


「亜美、今日遊びに行かない?」


鞄を持った里香が元気よく声をかけてくる。


あたしは勢いよく立ち上がり「うん!」と、うなづいた。


そして江藤くんへ向けて「もう、大切なものを落としたりしないでよね!」と、釘を刺したのだった。