毒舌王子は偽りのお人形の心を甘く溶かす



と、すごくウキウキとしたテンションできっぱり言い切られたものの……実際のところ今までに慎くんと過ごした時間は、恋人という間柄にしてはかなり短いと思う。


なにせ、話す時間はお昼休みのときくらいしかないのだ。


よって、今のところ恋バナで私が口にする定型文が『いっぱいお話したんだ〜、今日も楽しかったよ!』である。


それだけ言えば、あとは聞き役に徹するのみ。


聞き役とはいえ、恋バナに参加するのは普通の女子っぽい。上手く擬態出来ている。


進展があったとすれば、お互いを下の名前で呼び合うことくらいで。


小学生の付き合いか、と自分でも突っ込みたくはなるが、それ以上の進展を私自身が望んでいるのかと聞かれれば答えは否だ。


デートをしてないという事実に周囲はきっと、内心は驚いているだろうし、上手くいってないのかと心配されていそうなものだが。


私がいつも通りの様子で、悲しんでいるそぶりを見せない(悲しくないから当然だ)から深堀りされることはない。


──とはいえ、デートをしていないというのはもはや周知の事実であり、そろそろ問題が生じ始めている。


夏休み前に"結城かれんは彼氏と上手くいってない"という噂が流れてしまったせいで、一時期すっかり静かだった男子生徒達がここぞとばかりに猛アタックしてきたのだ。


そろそろデートの一回くらいはするべきなのかもしれない……。


部活に所属していない私は時間を作ろうと思えばいくらでも出来るが、運動部でなおかつ注目されている慎くんは平日も土日も、もちろん夏休み中だって部活漬けだった。