『は、はい……』


小学生に軽いお説教をしたあとに告白されるだなんて誰が想像出来ただろう?


入学してから何度も告白を受けてきたが、このようなシチュエーションは初めてだ。
よって、頭が状況を把握する前にほぼ反射で返事をしてしまった。


元々、彼氏は欲しいと思っていたのだ。


主に……男避けとして。


あと、クラスメイトとの恋バナにおける相手は高校生活の中で必須だとも思っていた。


女子の会話の八割は恋バナで出来ていると言っても過言ではない。


彼氏がいない者は不幸な者だと決めつけられ、非リア充だと悪口めいたものを言われる。


そのような扱いを受けるのは遠慮しておきたいところだ。


『一目惚れしました!俺と付き合ってください!』


彼氏を求めているにも関わらずこの聞き飽きたセリフに首を縦にふることが一度もなかったのは、今まで告白してきた人達ははっきり言うと"お人形さんである結城かれん"には不釣り合いな人ばかりだったから。


私自身、好きな男の子のタイプというものはよくわかっておらず、特にこだわりはないのだが……きっと、私に不釣り合いな人が彼氏になったとすれば興味や嫉妬、悪意…それらの矛先はその人へと集中するだろう。


学校という小さな一つの世界においてそれらの多くの感情が一人の人間へ向けられる。


その辛さを痛いほどわかっている私は無力な相手を軽々しく受け入れるほど薄情ではない。


……と、思っていたのだが。


なんとも軽々しく受け入れてしまった。


こんなミスをするなんて、私らしくもない。


まぁ、私らしくないといえば今年からずっと私らしくもないのだが。


それはさておき。


『……まじ?よっしゃあ!!』


私の返事を聞いてぽかーんと固まっていた目の前の男の子。


時が動き始めたと思ったら大きな声を上げてガッツポーズをした。


実に素直な反応である。