「妃名ちゃん…

お願い。」


昔からある意味苦手だったお母さんの瞳。

あまりにも純粋で美しいそれが、私は苦手だった。



…だって、ほっとけない儚さがあるんだもん。



憂いをもった透き通るような綺麗な瞳。

そんな瞳で見られると、昔から絶対に口答えなんてできなかった。



「わ…分かった。」


あ、と思ってももう遅い。


「妃名ちゃんありがとう!」


口から出た言葉は取り消せない。


「じゃあ、ママ手続きしてくる!」


そう言うと少女のようなキラキラした笑顔を浮かべ、パタパタと部屋を出て行ってしまった。