「さ、じゃあ行きましょ、妃名ちゃん。」

「え…どこに?」


いきなり明るい声を出したお母さんが、部屋にある荷物をまとめ出した。


「決まってるでしょ、ママの実家に帰るのよ。」

「え!…お母さんの実家?」


手を止めずおっとりと話すお母さんの言葉に思わず声をあげてしまった。

だって生まれてこの方、お母さんの実家なんてワード一回も聞いたことがない。


「そうよ、ママの実家。
結構大きいわよ。」


そう言ってイタズラっぽく笑うお母さんは、実際の年より20歳くらい若く見えた。