胸がきゅんっと音を立てるようだ。
ドキドキと鳴り出した鼓動が止まらなくなる。

「僕を選んでよ、シャルロット」

「ジャンク……」

私はジャンクにしっかりと抱かれたまま抵抗することを忘れていた。そしてそれ以上の言葉を紡ぎ出すことができなかった。

ぼんやりとしながら城に帰ると、今日に限ってばったりとアズールに出会ってしまった。
あんなことがあって私の注意力が落ちていたのだろう。普段忍者のようにこそこそと人目を気にしながら歩いているのに、何も考えず堂々と廊下を歩いていたようだ。

「勝手にどこに行っていた?侍女はどうした?俺の許可なしに城を抜け出すな」

大層不機嫌に眉を吊り上げながら、相変わらずの冷たい声で私を咎める。

「……ちょっと図書館に行っていただけよ」

「あの男のところか?」

「別にそんなんじゃないし」

「そんな男のところに行くな!」

と、私の夢小説ならそんな展開になっただろうけど、現実はまったく違った。

「彼は優秀だからな、学ぶことも多い。だが所詮は庶民だ、深く関わらないでいただきたい」

「庶民ってそんな言い方ないでしょう?」

「お前は王女なんだ、その自覚を持つべきだと何度も言っている」

「王女なら庶民のことを知ることはいいことだわ。ほんっと、アズールったら分らず屋!」

私は吐き捨てると逃げるように自室へ入った。