翌日、朝早くにスマホが鳴った。



番号を見ると元カノのものだった。



ぼーっとしてた頭が一瞬で覚めた。



やばっ、警察か、と思って出たら聞こえてきたのは女性の声。



「すみません、このスマホの持ち主さん知ってますよね? 直前の履歴にあなたの番号があったもので」



死人のスマホからの連絡には正直、驚いたが警察でないことにひと安心。



「はい、それ元カノのスマホですよ。なら、おれが渡しときます。いま、どこにいます?」



女性は電話で場所を指定した。



おれは急いでそこに向かった。







女性に言われた場所に到着。



改札を出てあたりを探そうとするが、まだ朝のラッシュ時間で人が多すぎ。



仕方ないので死人のスマホに電話をかけた。



「もしもし、着きましたけど。どこにいます?」



と同時にポン、と肩をたたかれた。



「こっちですよ」



まるでおれのことを知っていたかのような素早い反応にドキッとする。



そして、目の前に現れた女性の美しさにまたドキッとする。





かなりの美少女だった。



いや、年は変わらないくらいだから、少女ではないか。



とにかく清楚な美人さん系ってやつ。



自分の顔が緩みそうになるのを必死に堪えて真顔を作る。



「ありがとうございます。元カノにちゃんと返しておきますね」



「いえ、こちらこそおせっかいでしたかね? 元カノさんのスマホなら」



「あー、ぜんぜん大丈夫っす。きっと困ってるだろうし」





改めて彼女全体を眺めてみる。



服装センス、スタイル、もちろん顔。



どれも今カノよりぜんぜん上だった。



これもきっと何かの縁に違いない。



元カノのスマホのおかげってことか。



複雑に思いつつ笑みが出た。



「えっと、元カノってことは、今は彼女はいないんですか?」



彼女が真面目な顔で聞いてきた。





まさかの脈あり?



いや、彼女のあの落ち着きあるしゃべり方、振る舞い。



どう考えても、明らかに向こうの方がランク上位者。



本能がそう伝えてきたので、ひとまず場を和ませることを優先。



「そー、いなくて寂しいぼっち大学生してます」



彼女がクスッと笑った。



とりあえず、印象は悪くないようだ。



「あ、一緒にご飯行きませんか? 朝食べずに慌ててきて死にそうなもんで」



お腹を抑えて少しわざとらしく見せる。



もちろん、その場を和ませるための計算。



「ふふ、オーバーですねー。でも、、わたしも行きたいって思ってました」





彼女の笑顔につい見惚れてしまう。



「じゃ、先にこれを」



と言って元カノのスマホを手渡してきた。



「わざわざ、ありがとうございます」



丁寧にお辞儀してスマホを受け取ると、ふたり一緒にその場を去った。