連さんはそれらを意欲的にこなしている。
本人は当たり前のことをしているだけと思っているようで、日々の多忙をおくびにも出さない。実際、身体は頑健で、出張が続いたり明け方に帰宅するような日が続いても、けろっとしている。休日は時間があれば近くのスポーツジムに行っているそうだ。
私も誘われたけれど、運動は自ら進んでしたいわけではないので丁重にお断りした。

私たちの結婚は、先日、公けのこととなった。
とはいえ、私もあまり他部署と関わる仕事をしているわけでもなく、誰かから尋ねられたり、お祝いを言われるようなこともなく、生活自体は変わらない。事務方とやりとりするときも、旧姓の梢の名で呼ばれるので、案外知らない人間も多いのかもしれない。
実際、彼の妻として公的な場に出る機会も今のところはないのだ。

思わぬことで婚姻関係にはなったけれど、あくまで彼が後継者として内定するまでのこと。
期間限定なのだから、結婚式はできればしないほうがいいし、表舞台に出る機会は極力少ない方がいいだろう。離婚という運びになったとき、妻の存在は印象に残らないくらいの方がいいのだ。
書類上の妻。肉体的な接触もするつもりはないし、目立つこともしたくはない。