先輩達(みんな)が協力してくれた礼は私にではなく、会えた時にでも直接お伝えしなさい」

「っ、……はい」

先輩達(みんな)も期待してるんですよ。君が、白金バッジの夢の配達人になる未来に……。
ヴァロン(君の父親)が魅せた夢の続きが、また見られる事をね」

最高責任者(マスター)の言葉を聞くうちに複雑な気持ちはいつの間にか消えていく。そして俺の胸にはトクンットクンッと、嬉しい気持ちが広がっていった。

「その事に関してはヴァロン(父親)に。そして、親の七光りである自分にしっかりと感謝しなさい」

「……はいっ」

「親のコネでも、七光りでも、いいじゃないですか。それは変えられない事実で、けど同時に君の力でもあるんです。
存分に使って、どんどんのし上がりなさい」

「はいっ」

「そしていつか、ヴァロン(父親)にも、誰にも負けない、唯一無二の夢の配達人になりなさい」

「はいっ!!」

唯一無二の、夢の配達人ーー。
まだまだ遠い未来だけど、決して辿り着けない未来ではない。俺が歩みを止めなければ、いつか、きっと……。
けれど、その前に。必ず、1年以内に白金バッジの夢の配達人に俺はなる。


夢の配達人として、ようやく大きな一歩を踏み出した俺。無事にやり遂げられるか不安が全くない訳ではない。
が、それ以上に胸を弾ませている自分がいた。

「ツバサ君がご希望でしたら、この後隠れ家に寄りません?
私の口から直接的な事は言えませんが、上位10名のここ最近の仕事データをまとめた記録がありますわ。隠れ家外には持ち出せないデータなので、来て頂く必要があるのですが……」

「!……行きます!よろしくお願いします!」

「ふふっ、決まりですわね!では、一緒に帰りましょう」

「はいっ」

やる気が溢れて若干食い気味に返事をした俺の様子を見て、くすくすと微笑うノゾミさん。そんな彼女を見ると、天然でのほほんとした性格に思うが、仕事となると早くて的確だから本当に頼りになる存在だ。
1日も早くまずは一つ目の金バッジを目指して動き出したい俺は、ノゾミさんと共に部屋を後にしようとした。その時……。

「ーーおっ、と」

「!っ、……ご、ごめんなさいっ」

先に扉の外に出たシュウさんの声と、謝る女性の声。その女性の声に、俺の胸はドキンッと跳ねる。