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シュウさんと会ってから1週間後ーー。

今日は終業式。
明日から夏休みで、学校は昼前に終わった。
「明日から何する?」と、嬉しそうに騒いでいるクラス内で、きっと暗い表情をしているのは俺だけだろう。

休み。正直俺にはあまり有り難くない。
何も考えたくない。何かを考えてしまう時間が嫌だ。
やる事が尽きなくて、自分の事なんて考えられないくらい忙しい時間が俺は今1番欲しかったから……。


それでも、日常に逆らう事は出来ない。俺は荷物をまとめると、帰ろうと教室を後にした。
今朝一緒に登校した際「今日私達は用事があるから先に帰ってて〜」とランに言われたから、今日の下校は一人きり。

とても静かだ。
こんな時に実感する。ランとライの存在の大きさを……。あの二人が傍に居てくれるだけで、俺の心は軽くなるのだと。

独りで、居たくないなーー。

思わず心の中でそう呟いていた。
すると、校門を潜った瞬間。そんな俺の心の呟きに答えるように……。


「ーーツバサ!」

……え、っ?

この場に居る筈のない人物の声が、俺に聞こえた。
その声に、耳を疑う。信じられなくて、また瞳の能力(ちから)が起こした幻聴なのではないか?と思う。

……けど、聞き間違う筈がない。
"彼女"の声だけは、俺は絶対に聞き間違う筈がない。前夜祭の日に名前を呼んでもらったあの時、しっかりと刻まれて忘れられる筈がなかった。
俯いていた顔を上げたその先に居たのはーー……。

「レ、ノア……?」

何故かうちの学校の制服を着て、髪を左右に分けて三つ編みして、伊達眼鏡を掛けた、レノア。

「えへへっ。約束通り、会いに来てやったぞ!」

そう言って、ニッと歯を見せて彼女は微笑った。


ーーああ。
俺は、なんて馬鹿だったんだろう?

レノアの笑顔を見た瞬間、俺の孤独はあっという間に消えた。そして、悟った。

何を否定していたのだろう?
彼女を想うこの気持ちは、唯一無二の愛でしかない、とーー。

俺はそれを、ずっと認めたらいけないと思っていたんだ。
俺にとっての1番は母さんでなきゃいけない。だから、いつまでも子供のままで居て、他の誰も特別にしちゃいけないんだって、自分の成長を止めていた。