「……受けよう。
その申し出、受ける」

同じ想いが、確かにあったのだと感じる。

……もう、想い残す事はないーー。

俺は腰から剣を抜くと、そのまま構えた。
ガーネットの決意が鈍る事がないように、表情は決して崩さない。

俺は、彼女の両親を奪った冷酷な男だ。
ガーネットの為に、最期まで嘘つきの男で在ろう。

「……ありがとう。
……。さよなら……」

ガーネットはそう呟くと……。その場を駆け出して、俺の元に一直線で向かってきた。

その姿を見た時。
彼女と過ごしてきた10年間の想い出が、俺の中で溢れて……。

俺の気持ちはもう、ガーネットしか見ていなかったーー。

俺を信じて付いてきてくれたみんなの為に”生きなくては”と、思った気持ちが吹き飛んで……。愚かな一人の男が、ここに居た。

振り上げられた彼女の剣を受け止めようと掲げた剣を持つ俺の手は、ただのフリ。

……もう、演技なんて出来なかった。
これで最期ならば……。

ーーもう一度ガーネットを抱き締めたいーー

と、それだけが頭に浮かんだ。


ガッキイィィーンッ……!!

二つの剣がぶつかった金属音が鳴った。
その瞬間、俺の剣を持つ手から力が抜けて……柄が手から離れた。

俺は目を閉じると、両手を彼女に広げて抱き留める。
刺されてもいい、殺されてもいい。
俺は死を覚悟して、愛おしい温もりを抱き締めた。

……
…………。

腕の中に閉じ込めた、愛おしい、暖かい温もり。確かめるようにギュッと力を込めると……。俺の耳にドスッ!ドスッ!と、剣が二つ、地面に突き刺さるような音が聞こえた。

何故だ?
覚悟した筈の痛みを、感じないーー。

俺がゆっくり目を開けて辺りを見渡すと、少し離れた地面に突き刺さる二つの剣。

……そして。
俺の腕の中には、震えているガーネット。
俺の背中に手を回し、服を力一杯握り締めていた。