「自由に、生きてくれ。
これが俺の、最後の命令だ」

俺は目を閉じて、ゆっくり頭を下げた。
別れの挨拶を済ませた俺が、暫くそのままでいると……。

「ーー自由、か。
では。私が自らの意志で貴方様に付いて行くという選択肢は、認めてもらえるという事ですね?」

俺の耳に届く、アルトの信じられない言葉。

「え?」と声にならない声。
顔を上げると、アルト、メル、みんなが……。俺を見て、微笑んでいた。

「クウォン様は何か勘違いしていらっしゃる。我々は初めから、自由でした。
誰かに命じられたからではない。自らの意志で、貴方様と共に在りたいから……お側に居たのです」

メルの言葉に、他の隊長や兵士達が頷く。

そして、まるで目の前のみんなが一つになったように……。合図もないのに、一斉に跪いて頭を下げた。

「我々は、炎の国の炎の軍ではありません。クウォン様、貴方様の軍!
我々は、貴方様の手足なんですッ……!!」

みんなのその姿に、表情に……。自分はなんて馬鹿だったんだろう、と気付く。

「いつものように、言ってください。
”行こう!みんな!”って!
我々は、そのお言葉を待ってるんです!!」

みんなの言葉に、想いに……。
やっと、分かった。

俺のこの10年間に、無駄な事なんて何一つなかった。
夢も、恋も、何一つ叶えられなかった俺だけど……。ここに確かに、俺の幸せはあった。

ガーネットは例え俺の傍に居なくても、大切なものを残してくれた。
その宝石のように、”実り”と”深い絆”を俺に確かに与えてくれていた。

「ーーありがとう」

俺は目の奥から……。いや、心の奥底から溢れそうな熱い想いを込めて言った。

「……よし!
行こう!みんなッ……!!」

俺の言葉に「はっ!!」と、活気に満ちた返事が返ってくる。
欠けた者は、1人もいなかった。

みんな、俺の最後の戦いを見守ってくれる。