その様子にハッと我に返ると、私は慌てて立ち上がり身だしなみを整える。

「お、お帰りなさい!クー兄様!……っ」

同盟を結んでいる国へ行っていたクー兄様の一ヶ月振りの帰還。
それなのに、自分の今の姿は正直ないと思った。
朝からずっと稽古をしていて、女性らしさの欠片もない訓練服の上に土や埃で汚れた自分。何よりも、絶対に汗臭い。
久々に会えたのに色んな意味で真っ直ぐに顔を合わせられない。

なんでこんなタイミングで帰ってくるのよーー!

と、赤い顔を俯かせていると……。

「メル、悪い。
ガーネットを借りるからな!」

頭上からクー兄様のそんな声が聞こえたかと思うと、逞しい腕に力強く引き寄せられてあっという間に私も黒炎の上に乗せられていた。

「!っ……え?えぇえーーッ?!」

「よし!行くぞ……!」

一瞬の出来事。まるで私を攫うように、クー兄様は黒炎を走らせた。

っ……近い!近すぎるよぉ~っ!!

馬上で抱きかかえられるようにして前に乗っている為、私の頭が丁度クー兄様の口元に……。そして、すごく密着している。


や、やだやだっ……!
こんな汚くて、こんなに汗かいてるのに……っ!!

更にこの状況で余計に熱くなって汗をかいてしまう。対するクー兄様は相変わらずすごくいい匂い。
恥ずかしくて、逃げ出したくて、少しでも身体を離そうとすると……。

「ガーネット、危ない」

「っ……!」

私の身体にしっかりと回されたクー兄様の片腕が、ギュッと離れそうな距離を縮めてくる。

……こんなの、反則だよっ。

ドキドキが止まらない。
嬉しくて、大好きが溢れて、もう離れたいなんて思えない。
ずっとこの腕の中に居たいと思ってしまう。

クー兄様。
私は、貴方を……愛しています。

……
…………。