私は決して料理が得意ではない。

かと言って、特別苦手とかなんてこともない。

たまに母の手伝いでキッチンに立つことはあるけれど、それ以外ではそうそうない。



そんな私が手伝いとは別に昨日今日って2日連続でキッチンにいるのには、それなりの理由がある。



それは明日がバレンタインだから。

昨日のうちに友達とか部活とかで配る義理チョコなんかは準備し終えた。



今日は「本命」にあたる人へのチョコを作ろうと意気込んでトリュフの材料を並べてそれとにらめっこ。



なんで作るのを躊躇っているかって?

それは渡したい相手が、私の恋が叶うことのない...叶ってはいけない相手だから。



「まあダメなら、兄ちゃんにでもあげればいっか。」



私は渡せなかった時の解決策を見つけて、ようやく作る手を進めることが出来た。

キッチンからリビングへとチョコの匂いが充満していく。

甘ったるいようで、どこか苦いようなビターチョコの香りが鼻腔をくすぶる。