「確かに私は何も言えなかったから、輝羅くんは私が嫌がっていないと勘違いしていたのかもしれない。そこは私が弱かったのもいけなかったと思う。けど、抵抗したら抵抗したらで暴力を振るわれたりするし、とても言えなかった。なにかされると思うと怖くて怖くて、逆らえなかった。もうあんな日々には戻りたくない」




彼女の強い言葉に、俺は泣きそうになった。




彼女に図星をつかれたことに、ではない。




以前は言いたいことを心に仕舞い込むようだった彼女が、はっきりと物事を言えるようになっていたことに、だ。




思えば彼女の本音を聞いたのは、今日が初めてだったかもしれない。



そこでとあることに気がついた。




俺の縛り付けるような愛では、彼女の全てを俺という小さな器の中に押し込んでしまうだけだったことに。




けれど、あいつは違った。あいつ…久保は、莉桜のことを好きなのは俺と変わらない。本人はしらばっくれているが、自分の好きな人に対しての恋心なんて丸わかりだ。莉桜が鈍いのをいいことに近づきやがって、それがどうしても許せなかった。




でもあいつは俺みたいな束縛をせず、彼女の気持ちを最優先にした。自分の気持ちを押し付けることなく、彼女の希望を手助けした。その結果は…、悔しいけれど、俺の負けだ。




「…幸せになれよ」




俺の言葉はきっと届かなかっただろう。