「うう、有沙……ひくっ」
どうやら長沼の死を悲しんでいるようだった。それを見ていた牧田が露骨にため息をつく。
「ねえ、いつまでメソメソしてんの? ただでさえ疲れてんだからそうやって泣くのやめてよね!」
「だって有沙が、有沙が……」
「ああ! マジで鬱陶しい! あんなの運が悪かっただけでしょ。それより早く逃げないとあいつが来るよ」
そう言って牧田がスマホの画面を見せてきた。バイブ音を轟かせながら、マリアの位置情報が表示されている。赤色の点滅は一階の教材室の近くにあった。
「ほら、さっさと行くよ!」と牧田が教室から出ていく。保泉は目を充血させながら後を追っていた。
教室にはまだ鈍い音が響いている。その音を頼りに近づいたのは児玉の席だ。
机の横にかけられているカバンを開けると児玉のスマホが光っていた。
そういえば清水と同様に児玉もスマホが入ってるカバンごと教室に置いてきたと言っていた。俺は震えているスマホを手に取る。
〝もっとみんなと仲良くなりたかった〟
児玉が言った最後の言葉が頭をよぎった。
悔しかっただろう。苦しかっただろう。俺はあの時した自分の行動が正しかったのかいまだにわからない。
でも児玉や他の人たちの無念を知っている。だからこそ俺は生きなきゃいけない。
いや、死ぬわけにはいかない。絶対に。
「児玉。これ借りるぞ」
スマホの日付はやっぱり俺の感覚から一日進んでいた。
鬼ごっこは明日になれば終わる。俺は児玉のスマホを大切に握りしめて走り出した。



