マリアちゃんと鬼ごっこ



学校の正門は開いていた。

マリアがいることも想定しつつ昇降口から校内に入る。いつでも外に行けるように上履きには履き替えなかった。

廊下には誰のものだかわからない靴跡が残されている。慎重に進みながら二年B組のドアを開けた。

あの日、ここからすべてが始まった。

たしか最後に教室を出たのは俺たちだったはずだけど、机や椅子の乱れがあの時とは違っている。

誰か教室に戻ってきたのか、あるいは身を潜めるための場所として使ったのかかはわからない。

俺は自分の席に近づいて机を指でなぞる。

普通に授業を受けて、三花や凛太郎と喋って、うるさいクラスメイトに顔をしかめる。そんなありふれた日常を送っていたはずだったのに、まさかこんなことに巻き込まれてしまうなんて誰が想像できただろうか。

叶うなら時間を巻き戻したい。

なにもかもが夢の出来事だったと思いたい。

……と、その時。廊下からスタスタと足音が響いてきた。俺は慌ててドアを押さえにいく。

ドンドンドンッ!! 

誰かがドアを開けようと叩いている。

もしかしてマリアか?

じわりと冷や汗が滲んできたところで「ちょっとなんで開かないわけ? こんなに建て付け悪かったっけ?」という声が耳に届いた。

この声って……。押さえるのを止めると、ドアが勢いよく開いた。

「わっ、村瀬じゃん!」

教室に入ってきたのは、牧田と保泉だった。