「私を怒らせちゃったね♪」
後ろから有野に覆い被さっていたのは、ドロドロに溶けたマリアだった。
体の右半分が原形をとどめていない。けれど、マリアは動いている。
「これ便利だね。私も欲しくなっちゃった」
その手には先ほど三人が使っていたガスバーナーが握られていた。「これでいいのかな?」と、マリアがスイッチを押す。すると、銀色の筒から炎が吹き出した。
「やめろ……やめてください……」
「同じように燃えてね♡」
「うわあああっ……っ……!!」
マリアは有野の髪の毛に火を付けた。必死に消そうとしても、炎は瞬く間に広がっている。
「たす、けて、瀧川、高橋……」
炎に包まれながら有野がふたりに近づく。けれど、瀧川たちは助けるどころか後退りをして距離を取っていた。
有野は崩れるようにして床に膝をつく。バタンと倒れる頃には有野だとわからないくらいに燃えていた。
「私を怒らせたんだから、みんなぐちゃぐちゃになって死んで」
マリアの視線が俺たちに向けられた。
顔面が溶けているマリアはこの世のものとは思えないほどの姿になっている。
みんな一目散に走り出したけれど、靴紐に引っ掛かった高橋が勢いよく転倒してしまった。その隙をマリアが見逃すはずもなく、すぐさま馬乗りになっていた。
「よ、寄るな! 化物!」
「私を醜い姿にしたのはきみたちでしょ? でも平気よ。ママがすぐに綺麗に縫ってくれるから」
「……っ」
高橋は背中にマリアを乗せたまま床を這っていた。そして救いを求めるように手を伸ばした。
「なあ、俺たち友達だよな?」
高橋が掴んでいたのは瀧川の足だった。
「この鬼ごっこだって俺がいたからここまで逃げて来られただろう?」
高橋が涙目になって訴えている。
「だから助けてくれよ。頼むよ」
その言葉を聞いて瀧川がポケットからナイフを取り出した。そして突き上げて刺したのは……。
「……うぐっ」
掴んでいる高橋の手だった。



