「ねえ、このクマとっても可愛いでしょう? お喋りできたらもっと楽しいけどこの子はダメ。だって命を知らないもん。だから私たちみたいなAIにはなれないの。可哀想だよね」
マリアが少しずつ俺との距離を詰めてきた。
「……私たち? お前以外にもAIがいるのか?」
「いるよ。あ、言っちゃった!」
……人間以上の存在になりうる可能性がある国家兵器。そんなものがマリア以外にもいると思うと恐怖を通り越して絶望しかない。
「な、なんで国は俺たちにこんな鬼ごっこをやらせてるんだ? これは立派な殺人だ。こんなの許されるわけがない!」
「きみはとことん考えることがズレてるね。でもいいや。もう死んじゃうし、ね?」
「くっ……」
思いきり横に振られたノコギリが俺の顔のギリギリを通過していく。ブンッという風の音とともに、なにかが裂けた感覚がした。
ゆっくりと頬を触ると、爪に綿が引っ掛かっていた。
どうやら殺されたあとに人形になるのではなく、ノコギリで切られた箇所が人形になるようだ。
だから火野の腹からも綿だけが出ていた。
そんな火野はすでにぐったりとしている。死んでしまったのか、それとも気絶してるだけなのか。それすらも確認できる状況じゃない。
「きみ反射神経がいいんだね! でも次は逃がさないよ」
マリアが目を細めてニヤリとした。体中がゾクッとしたところで「死にたくなかったら避けろ!」という声が背後で聞こえた。それと同時に、細長いものが俺の頭上で横切っていった。
ガンッ!
マリアの体が大きくよろける。金属バットを持った瀧川が間髪いれずにマリアのことを押し倒した。
「有野、高橋!」
「はいよ」
瀧川の合図でふたりがマリアの横に立つ。その手にはアウトドア用のガスバーナーが握られていた。



