マリアがゆっくりと自分の背中からハサミを抜き取る。その先端には洋服の切れ端が引っ掛かっていた。
「ああ……お洋服が破れちゃった……」
いつもニコニコしてるマリアがわかりやすく落ち込んでいる。背中を刺されたことより、切られた洋服にショックを受けてるみたいだ。
「許せない。だってこのお洋服はママが着てたものだもん。それをママが私にくれたのよ。それなのに……」
しょげた表情を浮かべたあと、マリアはギロリと矢野のことを睨みつけた。そしてじりじりと矢野との距離を詰めていく。矢野はもう一本のハサミを取り出してマリアに向けていた。
「次は頭を狙うわ!」
マリアにハサミを刺した時点で覚悟が決まっていたのか、矢野から恐怖心が消えていた。
「頭? さっき無難に背中しか狙えなかったくせに、本当に私の頭をそのハサミで刺せるの?」
「さ、刺せるわ!」
「ふふ、無理よ。手が震えてる。私のことを殺したいなら一発で狙わなくちゃ。こんな風に、ね?」
それは……一瞬だった。
マリアは先ほど抜き取ったハサミを素早く矢野の頭に突き刺していた。
「……あ、あ、あ……」
矢野がぺたんとしゃがみ込む。
「感謝してね。あえて急所は外したの。私の洋服を切ったんだから、もっともっと苦しんでよ」
そう言って、マリアは何度も、何度も、何度も、矢野の頭にハサミを刺した。
グサ、グサッと、刺しては引いていく行為に、矢野は動かなくなっていた。辺りに散らばっている白い綿の塊。矢野はすでに息絶えていて人形にされていた。
「……うそ、だろ。矢野……」
凛太郎が力の抜けた声を出す。



