鼻か、あるいは目か。顔のなにかしらの部分が破損していてもおかしくない音だった。
野球ボールは俺の足元に落ちてきた。靴先に当たった感触からして硬式ボールで間違いない。
「ちょっとこれは痛いよ。おかげで目が取れちゃったじゃない!」
ぽろっとマリアの手に眼球が落ちた。
……う。その生々しさに吐き気がしたけど、マリアは動じることなく空洞になっている右目に眼球を押しはめていた。
「でも平気。私の目は取り外しできるんだ! それより……今やったのはきみかな?」
マリアの視線が凛太郎を捉えていた。顔は笑っているけど俺には怒っているように見えた。
「や、やばい、逃げろ……!」
俺が叫ぶのと同時に、マリアは素早くベッドの上を跳ねながら凛太郎に向かっていった。
「ねえ、体を半分にしちゃうっていうのはどう?」
マリアはあっという間に凛太郎の目の前にたどり着いてしまった。それはマリアが得意としてる至近距離。間髪いれずにノコギリが凛太郎の頭に振り下ろされていた。
「……や、やめてくれ!!」
絶叫するように声を上げると、マリアの手が止まった。ノコギリは凛太郎の頭上すれすれで停止している。
マリアは首だけを後ろに向けた。その背中には、鋭く尖った医療用ハサミが突き刺さっていた。
「……っ、もう誰も殺させないわ!」
マリアにハサミを刺したのは矢野だった。



