気づくとマリアの足音は聞こえなくなっていた。
もしかしたら別の通路に曲がったのかもしれない。
でも安心はできない。マリアが病院にいる以上、見つかるのは時間の問題だ。
「今のうちにここから離れたほうがよくない?」
三花が四つん這いで俺の隣に移動してきた。
「うん。早く病院から出よう」
凛太郎と矢野も同じ考えのようで、頷いているのが暗闇で見えた。物音を立てないように忍び足で扉の前に向かった。そして静かに扉をスライドさせる。
「あは、みーつけた♪」
開けた瞬間、マリアと目が合った。全身に鳥肌が立って腰が抜けそうになった。
足音が消えたのは当然だ。だってマリアはエナメル靴を脱いで裸足になっていた。まるで俺たちの思考を弄んでいるかのように。
「騙されるなんておバカさんでちゅね~」
そう言ってマリアは俺にノコギリを向けてきた。
……あ、ダメだ。死ぬ。
「永人、しゃがめ……っ!!」
諦めかけている中で、背後から声が飛んできた。頭で処理する前に体が反応して腰を屈めていた。
すると、ビュンッと風を切るように、なにかが頬を通りすぎていく。
ゴンッ!
そんな鈍い音が響く頃には、マリアの顔面に野球ボールが直撃していた。



