マリアちゃんと鬼ごっこ



「だ、大丈夫か……!?」

「清水が、清水が……っ」

児玉の視線の先には崩れた本棚の下敷きになっている清水がいた。すでに意識はなく、体を引っ張ろうとしても本棚が重しになっていて動かせない。

「む、村瀬くん、どうしよう……ゲホッゲホッ」

おそらく児玉はずっと清水を助けようとしていたんだと思う。児玉の声が掠れている。きっと肺も限界だ。

清水が下敷きになっている本棚の上には別の本棚が重なっている。どう考えてもふたりで持ち上げるのは不可能だった。

なにを優先して、なにを犠牲にするべきか。

また答えのない自問自答が頭をよぎる。

すでに炎が俺たちのほうへと回ってきている。このままだと帰り道もいずれ塞がれてしまうだろう。

「……っ、清水、ごめん……っ」

俺は児玉だけを支えながら、出入口のほうに向かった。

「……ハア……ハア……ッ」 

死に物狂いで外に出て、地面に倒れ込んだ瞬間に、古本屋はバキバキと音を立てて崩れた。

また、友達を救えなかった。  

まだ清水が生きていたかもしれないのに、俺は、俺は……。

「へえ、悪運が強いんだな、お前」

俺と児玉を見下ろしていたのは瀧川だった。