「ねえ、マリアちゃんがこっちに来てるよ!」
スマホの画面を見ながら矢野が叫んでいる。
なにを犠牲にして、なにを優先すべきなのか判断がつかない。でも俺はこの火の中に児玉と清水がいることを知っている。
見殺しになんて……できるはずがない。
俺は真向かいにある青果店に走り、水撒き用の蛇口をひねってホースを自分に向けた。
バシャバシャと頭から水を浴びたあと、その足は古本屋に向かっていた。
「待って、永人! 行っちゃダメ!」
俺のことを止めるようにして三花に手を掴まれた。
「大丈夫。必ず戻ってくるからお前たちは先に逃げてろ」
「……な、永人っ!」
三花の手をそっと振りほどいて、俺は炎の中へと飛び込んだ。入った瞬間に、視界がオレンジ色変わった。
本が燃えている。焦げ臭い。熱さで息もできない。じわりじわりと肺が焼けていくようだった。
「……っ、児玉、清水……っ!!」
制服の袖で口を覆いながら、必死に呼び掛けた。
バキ、ミシッと建物崩壊も始まっている。早く、早くしないと……。
「ゲホッゲホッ……む、村瀬くん……っ」
熱風の中で児玉の姿を発見した。



