店の前に積まれている古本は灯油まみれになっている。こんなところで着火したらどうなるのか考えなくてもわかることだ。
「村瀬、止めるなよ。いいところなんだからさ」
低い声が聞こえたかと思えば、瀧川もライターを持っていた。
「マリアに俺たちの居場所がわからないようになってるなら呼び出せばいいんだよ。こうやってな」
「……や、やめろっ!!」
火のついたライターがスローモーションのように瀧川の手から離れていく。あと一歩のところで間に合わずに、ライターは灯油の中へと放り込まれた。
「う、嘘でしょ……」
「中に児玉と清水が……」
矢野と凛太郎が絶句していた。
乾いた書物が多いせいなのか、炎はみるみるうちに古本屋の全体を覆っていた。
「ふ、あははは。ほら、来いよ、マリア!」
空に充満していく黒煙を見ながら、瀧川が満足そうに笑っている。
どうやってこの火を消せばいいのかわからない。そうやって考えてる間にも炎は大きく燃え広がっていた。
「なんで……なんでこんなことするんだよっ! 児玉と清水がいるんだぞ……!!」
俺は怒りとともに、瀧川の胸ぐらを掴んだ。
「あんな縮こまってるだけの蟻が二匹死んだところでなんの支障もねーよ」
「……なんだと?」
「この煙を見れば必ずマリアはここに来る。俺があいつのことを殺してやるから感謝しろよ」
元々イカれたやつだと思っていたけど、ここまで頭がおかしいとは思わなかった。



