マリアちゃんと鬼ごっこ



「ここで立っていてもどうにもならない。とりあえず建物がある場所に移動しよう」

そう言って根本の肩に手をかけた時、電気とは違う振動が体に走る。それは握っていたスマホからだった。

「な、永人。マリアちゃんが近付いてきてるよ!」

三花だけではなく、この場にいる全員のスマホが震えている。それは紛れもなくマリアの接近を表す通知だった。

「は……早く逃げようっ!」

俺たちは一斉に走り出す。住宅地だと死角がありすぎて、鉢合わせもありえる。陸橋から離れてもスマホのバイブ音は止まらない。

焦った俺たちはぐるぐると町を走り続けて、気づくと河川敷まで来ていた。

「ハア……ッ、ちょっと全然バイブが消えないんだけど、どうなってるの?」

先に足を止めたのは井上で、それに続くように浜口も矢野も三花も必死で呼吸を整えている。女子は体力の限界だった。

「……ハア……ハア……」

もちろん俺を含む男子の息も上がっている。

河川敷には静かな川が流れているだけで、視界を遮るものはなにもない。

マリアが近くにいるならどこからでも確認できそうなのに、その姿を(とら)えることができない。