チクチクとエントランスにある時計の針の音だけが響いている。
明日の予定が決まっても、時間の進みが速くなるわけじゃない。
ソファでは凛太郎が口を開けて寝ていて、三花も小さな寝息をたてている。俺はもちろん眠れるわけがなくて、ずっと落ち着かない夜を過ごしていた。
そして早朝六時。ようやく外が明るくなってきた頃に、ドンドンドンッ!!と、突然区役所の扉を叩く音がした。
「え、な、なに?」
その音に三花が飛び起きる。
扉は非常口も含めて内側から施錠してある。もっともマリアが行儀よく扉から入ってくるとは限らないし、窓ガラスを割られてしまえば簡単に侵入されてしまうことはわかっていた。
……ドンドンドンッ。ドンドンドンッ!!
扉を叩く音は次第に大きくなっていく。マリアの接近を知らせるバイブ音は鳴っていない。位置情報を確かめようと画面に目を向けた瞬間に……。
「ひぃぃ……っ」
三花は怯えたように、俺の腕にしがみついてきた。扉に張り付いている無数の手。
中を覗き込むように浮かんでいる顔は……。
「え、や、矢野!?」
俺の言葉に、三花もおそるおそる瞑っていた目を開ける。
「村瀬くん、青山さん、開けて!」
そんな声が聞こえてきて、俺は急いで施錠を解いた。



