「だ、誰か大人を呼んできたほうがいいよね? 学校に誰もいないなら外に出ればいるかもしれないし!」
「う、うん! そうだよね!」
そう声を出したのは、アイドルグループの追っかけをしている櫻木と向井という女子だった。
立場的には俺と同じ二軍だけど、女子のリーダー格である牧田に好かれているせいか騒がしい部類に入る女子たちでもある。
「じゃあ、呼びに行ってきてよ。ふたりは素早く動くの得意でしょ? 私たちは大人しくここで待ってるからよろしく~」
牧田は自分の席に座りながら長い足を組んでいた。
牧田はよく取り巻きの女子をパシリに使っている。とくに櫻木と向井を可愛がっているように見せかけて、うまく利用してることは大抵のクラスメイトが気づいていることだった。
「オッケー! うちらに任せてよ!」
ふたりはパシリされているとわかっていないのか、やる気満々という顔をしていた。
「ちょっと待って。今は無闇に歩かないほうがいいよ。状況だってなんにも把握できてないんだし……」
「おい、黙れよ、矢野。ふたりが行くって言ってんだからいいじゃん。反対してんのあんただけだから。ね? みんな?」
牧田の問いかけに女子の半分が相づちをして、他の人たちは目を合わせないようにしていた。女子はみんな牧田のことが怖いんだ。
櫻木と向井は牧田の機嫌を損ねないうちに、「じゃあ、行ってくるね!」と教室から出ていった。
メッセージが届く直前まで遊びにいこうと息巻いていた瀧川たちはまだドアの前にいる。



