マリアちゃんと鬼ごっこ



「言ったでしょ? こんなのは私には効かないよ」

「……くっ。お前を作ったのは先生なんだろ?」

「先生?」

「日高景子先生だよ!」

するとマリアが目を見開いた。そして「あはははっ!」とマリアの高い声が響く。

「ああ、あのおばさんね」

「おばさんって……」

「先生がお前のママだったんじゃないのか?」 

「どっちかって言うときみがそう呼ぶべきじゃない?」

「は? なにを言って……」

聞き返す前にマリアの手にまた力が入った。あと数センチでノコギリが顔に当たる。もうダメだと諦めかけた……その時。コロンとなにかが俺の元へと転がってきた。俺は迷わずにそれを手に取る。

「きゃあああっ!」

マリアの顔面に冷却スプレーを噴射すると、その体が後ろに下がった。同時にノコギリも手から離れてマリアが無防備になった。

「これで終わりだ」

俺は最後の力を振り絞ってマリアを屋上から突き落とした。

ふわりと栗色の髪の毛が宙に浮いている。

ドサッ!と鈍い音がして手すりから下を覗くと、マリアが地面の上で倒れていた。

「……ハア………」

俺は力が抜けたようにその場にしゃがみ込んだ。

ブーブーブー。

マリアの位置情報が消えたタイミングでスマホにメッセージが届く。画面には【鬼ごっこ終了】と書かれていた。