ほろ苦彼氏の甘い口づけ

「お前な……知ってるならかけてくるなよ。もう切るぞ」

【待って待って! ごめんって! 新淵が心配で電話したんだよ】

「心配? 何の?」

【猛獣ちゃんにやられてないかどうか。あ、それとも、もう返り討ちにして食べちゃっ】



司は耳からスマホを離すと、無言で通話終了ボタンを押した。



「なんかごめん。俺もこないだ、電話した時に追及されて……」

「そうだったんだ……」



私が勝手に話したせいでと自責していたが、あっちも同じだったらしい。


電話なら、声と内容で読み取ったってことだよね。

心強い味方ではあるけれど……さすがにこれは、世話好きというより過干渉な気がする。

過激な追っかけの人みたいにならないよう、沢村のためにも厳しく注意したほうがよさそうだ。



「なぁ、来月の14日って空いてる?」

「ホワイトデーの日? まだシフト決めてないから空いてるよ」

「そっか。もしお互い休み取れたらさ、この前行けなかったホテルに行かない? 泊まりで」