ほろ苦彼氏の甘い口づけ

だから──。



「さっきも言った通り、私は司しか考えられないから。これから先も2人で過ごしたいし、壁が立ちふさがっても一緒に乗り越えたい」

「美羽……」



弱々しく呟いた彼の唇にもう1度口づけをして。



「今日の分のお返し、ちょうだい?」



おねだりした瞬間、熱を帯びた黒い瞳が揺れた。



「……待ってって言っても、待たないからな」

「うん」

「嫌だったら抵抗して。殴っても蹴ってもいいから」

「わかった」



最後まで入念に確認する姿にふふっと笑みを漏らし、目を閉じる。すると、両頬が包み込まれて唇に温もりが広がった。


離れて、見つめ合って、微笑んで、またくっつけて。

角度を変えながら、静寂な部屋にリップ音を響かせる。



「……ねぇ、もっと大人なやつしようよ」

「大人? 首にしてたやつ?」

「ううん。こっち」



赤く色づいた唇を指先で押し下げ、半開きに。



「次は5年分のお返し、ちょうだい?」

「ったく……しょうがないな」