ほろ苦彼氏の甘い口づけ

司の両手が私の両手首を掴んだ。



「他にも、噛みついたり、吸いついたり……もっと酷いことするかもしれない。それでもいいの?」



口からは恐ろしい言葉が出てきているが、手には全く力が入っていない。きっと私を怖がらせないための配慮なのだろう。



「……うん。いいよ」

「本当に? 傷つけるかもしれないんだよ?」

「大丈夫! そこまでやわじゃないよ」

「……まだ酔っぱらってるわけじゃないよな?」



顔を覗き込んでしつこく確認している。
その姿はまるで、先週ぐいぐい迫っていた自分のよう。

立場が逆になると結構面倒くさいんだな。


犯した過ちを反省して、目の前の彼に真剣な眼差しを向ける。



「司が私を大切にしてくれているのはわかるよ。だけど……」



抱き寄せる時も、涙を拭う時も、いつだって司は壊れ物に触るみたいにすごく優しい。

たとえ理性が崩壊したとしても、私が嫌がることはしないはず。