ほろ苦彼氏の甘い口づけ

自分に言い聞かせるものの、1度こぼれ落ちた涙はなかなか止まってくれず。棚の上のティッシュを1枚取った。


あまり怒りを露わにしない性格とはいえ、かれこれ十数年の付き合い。怒らせたことは何度かあった。

でも……大声で言い返してきたり、乱暴に体を離すなんてことはなかった。


鼻水が出てきてもう1枚ティッシュを取る。


……多分怒った原因は、私の言葉足らず。意固地になって迫ったせい。

その上、話も聞かずに強行突破しようとした。


司からしてみれば、我を失った人間に襲われているようなもの。

もし自分が司の立場だったら……私もきっと同じ行動をすると思う。


突き飛ばされて怖かったけど、司はその何倍も怖かったはず。だから私が泣くのはお門違いだ。


──コンコンコン。



「……開けていい?」

「……ちょっと待って」



鼻をすすっていると、ドアをノックする音が聞こえた。

泣き顔も何度も見られているが、今日はバッチリメイク。汚い顔を晒したくない。

急いで顔の水分を拭き取り、恐る恐るドアを開ける。