「……おい、マジでいい加減にしろ」

【ごめんごめん。それで何に見えたの? 虎? ライオン? 狼? それとも熊?】



さっきまで真剣にアドバイスしていた彼は一体どこへやら。

呆れつつも、いざ自分も同じことをされるとこんなにも面倒なんだなと実感した。



「どれでもいいだろ。これ以上笑うなら切るぞ」

【あぁ待って待って。最後に1つだけいい?】

「なんだよ」

【もし華江が女豹化したら、狼かライオンに化けて応戦しな!】

「…………」

【あれ? おーい、聞いてま】



話してる途中で通話終了ボタンを押した。


猛獣には猛獣で対抗しろ、逃げるんじゃなくて戦え、か。
それができるならどれだけ楽か。


体格も力も圧倒的な差があるのに、一瞬でも本気を出したら……怖がって泣くかもしれない。それこそ取り返しがつかなくなる。

たとえ冗談でも、押し倒すことはできない。


また求められるかもしれないけど、まずは胸の内を打ち明けるのが先。お互いの気持ちを確かめ合うのが先だ。

バレンタインデート成功に向けて固く心に誓った。