ほろ苦彼氏の甘い口づけ

イルミネーションを観たいと言ったのも、この写真を見せたのも、全ては司からキスしてもらうため。

完全に気分が高まったところを見計らい、上目遣いでおねだりしてみた。



「ここ、外だからまた今度な」



信号が変わり、速歩きで横断歩道を渡り始めた司。


……ちょっとストレートすぎたかな。

だけど……その言い方なら、外じゃなければオッケーと受け取っていいんだよね……?



「いきなりごめん。ならさ、あともう1軒行かない?」

「いいけど……どこ? カフェとか?」

「ううん。ホテル」

「ええっ? ここから近いの?」

「隣の区だから、少し歩くかな。川沿いにあるところなんだけど……」



歩道の端に移動し、バッグから手のひらサイズの冊子を出して渡した。



「友達が教えてくれて。設備とご飯の種類が充実してて、おまけに夜景も堪能できるんだって」

「へぇ、楽しそう。けど、値段高そうだな。それに、泊まらないと部屋借りるの難しくない?」