私の婚約者は最高に可愛い。

 光を集めたような金色の髪は、ゆるくウェーブしていてふわふわだ。その髪にぴったりの白い肌、宝石のようなアイスブルーの瞳。華奢な身体には優しい色のドレスがよく似合う。

「ウィル?」

 その鈴のような可愛らしい声も。

「ウィル、疲れましたか?」
「ん?あ、いや、ローズを眺めていた」
「えっ!?や、やっぱりこういうドレスはお嫌いでしたか!?」
「何を言う。最高だ」
「ええ……あ、ありがとうございます……」

 戸惑い恥じらう彼女も愛おしい。彼女は自分が可愛らしい天使のような見た目であることを自覚していない。妖精王に拉致されておきながら、これ以上油断は禁物だ。こうしてそばにいるときは片時も離れず、愛らしい彼女を眺めることにしよう。

 今は私達の婚約披露パーティだ。今ここにいる貴族達には、ローズは私のものだとわからせてやらねばならない。彼女にだけ微笑み、隙あらば彼女の頬にキスを落とした。ダンスはもちろんローズとだけ踊った。騒がしい令嬢達もこれで大人しくなれば良いが。この上さらに愚かな真似をするならば、公爵家の力を持って排除してやる。

 愛おしさが高まって、ローズを見つめていると、「……ウィル、あまり微笑まないでください」と懇願された。

「何故?」
「だ、だって、ウィルが笑うのは、珍しいからっ」

 私が笑うのが珍しいと、何故ローズは困るのか?よく分からず首を傾げてまた笑うと、ローズは私の手を引き、身体を反転させた。

「ほら!ウィルのことを、たくさんの御令嬢が見ているんです!ウィルが微笑む度に私のライバルが増えていくんですっ!そんな素敵な笑顔、見せないでください!」
「!」

 なんと、可愛いやきもちを焼いていたようだ。思わずローズを抱き締めた。遠くで悲鳴や歓声が聞こえるような気もするが、気にしない。この可愛くて世界一愛おしい妻を、私の腕に閉じ込めたかったのだ。

「愛しているよ。私の笑顔も何もかも、ローズだけのものだ」
「……私の全ても、ウィルのものです」
「そうか。ならば誰も邪魔させまい」

 いかなる時も、いかなる敵も。ローズとの仲を引き裂くものがあれば排除しよう。君の不安も消えるほどに、私は愛を囁こう。

「愛している」
「わ、私も、……です」

 顔を真っ赤にしながら、恐らく傷痕の部分に服の上から触れている。癖になっているのだろう。

 結局、私は彼女の胸の傷痕を見ていない。婚約パーティが始まる前に、マーガレット王女に治療してもらったのだと話していた。完全には消せなかったそうだが、以前より顔つきが自信に満ち溢れている。そして、傷が消えても私のそばにいてくれる。それがうれしかった。

「ウィル、治癒魔法を覚えようとしてくださったこと、聞きました」
「しかし結局習得出来なかった」
「はい、ウィルにあの傷痕を見られなくてよかったです。王女様にとっても素敵に変えていただきました!楽しみにしていてくださいね!」
「……それは誘っているのか?」
「えぇ!!い、いいえ!!あの、ご、ごめんなさい!」

 焦るローズもとびきり可愛い。
今夜はきっと眠らないだろうな、と想像しながら、パーティが終わるのを今か今かと待ち続けた。