「ローズちゃん!出番よ!出番!」

 お義母様が笑顔で手を振りました。私は承知した旨を目で合図します。

 左手の薬指を、そっと右手で触ります。ウィルが咲かせた小さな指輪の花を大事に愛おしく思いながら目を閉じました。息を吸い込み集中して、身体の中の魔力を集めます。そして両手を少し上に振り上げ──。

「わぁ!」
「花びらだ!」
「フラワーシャワーね」
「素敵!」

 色とりどりの花びらが舞う魔法です。床に着くと消えるように練習しました!こうした花魔法に馴染みのない方が多いようで、皆さんとても驚いた顔をしています。ですが、綺麗なお花が次々と舞うその美しい光景に、次第に皆さんは笑顔になっていきました。
 私は、自分の魔法を沢山の方に披露するのは初めてでしたが、その笑顔にとても嬉しくなりました。

 そして会場中の皆さんに花魔法をご覧になっていただいた直後、ウィルが堂々と話し始めます。

「皆さん、本日はようこそおいでくださいました。この度は、私の婚約者を披露すべく─」

 沢山の人が私を見ています。品定めのような目線も、ウィルの横を奪いたいと羨む目線も、祝福の優しい目線も、全て感じ取りながら、私は堂々と微笑んでいました。

 ウィルが言ってくれた「好き」が、私に力をくれています。私も同じ気持ちだから、貴方の心に応えたい。
 今までの不安も消えるほどの、強い想いが私を支えていました。

 挨拶が終わり拍手を浴びながら、ウィルが私を見て微笑みます。私も見つめ返しニコリと笑うと、ウィルはまた私にキスを落としました。

「ウィルッ、み、みなさん見ています」
「見せつけている」
「ええっ」
「君に余計な虫が付かぬようにせねば。今夜のローズは可愛すぎる」
「か、かっ、かわっ!?」

 冷徹なイメージのエルフィストン公爵が、婚約者に甘い微笑みを絶えず送り、隙あらばキスをし、ベタベタイチャイチャしていたことが社交界に広まるまで、あと数時間。