「好きだ」

 ウィルにそう告白されて、私は戸惑っていました。絶望的な気持ちでいたのはつい先程までのこと。
 それなのに、やっと会えたウィルに信じられない程の嬉しい言葉をいただいて、私は舞い上がっていました。

 おまけに、き、キスまで!

「戻ろう。婚約発表パーティだ。君に悪い虫がつかぬよう見せつけてやろう」

 とっても甘い微笑みを携えて私を抱き上げると、ウィルは屋敷のほうへと歩き始めます。咄嗟にウィルの首元に掴まりましたが、意外にもがっしりとした体躯と密着感に戸惑いを隠せません!

「あの、私歩けます!おろしてください!」
「嫌だ。二度と離れない。君が変な勘違いをしないように、私は欲望のまま行動することにする」

 よ、欲望のままって!欲望ってなんですか?!

「ウィル、あの……本当に、良いのですか?」
「何がだ」
「私との婚約です。王女様のことは……」
「……王女と、この数日間のことは、説明をする。だが、今はこうして君を堪能させてくれないか」

 見たこともない晴れ晴れとした笑顔で口づけをされてしまえば、もうそれ以上何も言えず、私はおとなしく屋敷まで運搬されたのでした。