訳アリ令嬢ですが、憧れの公爵様に溺愛されています!

 ローズが居なくなったと知り、彼女を探して魔力を辿ると、庭園の一角にたどり着いた。だがここで途切れている。なぜだ。どこへ消えた?何度も魔力を辿ろうと試みるが、やはりそこで途切れていてどこに行ったのかわからない。
 ──ローズを失う?初めてその想像をしてしまい、体中が凍り付いた。彼女を危険に晒すくらいなら、早く決断してしまえばよかったのだ!
 
『ウィル、君の婚約者は土の妖精王のところにいる』

 幼い頃から慣れ親しんだ水の妖精がやってきた。土の妖精王?!妖精界に連れていかれたということか?!

「連れて行ってくれ!頼む!」
『連れてはいけない。だけど、土の妖精王が作った扉の場所を教えよう』
「扉?」
『伯爵家からやってきた花の妖精の為に、妖精王が作ったようだよ。……ここだ』

 花の妖精というのは、ローズが友達だと言っていたで「デイジー」のことだろうか。デイジーが伯爵家の庭に帰れるように扉を作ったということだろう。その扉に入れば、妖精界に行けるはず。
 水の妖精が指さしているのは、薔薇の茎と茎の間。人間がやっと通れるかどうかという隙間だった。魔力を駆使して扉に手をかざすと、意外にもあっさりと扉が開いた。

「ローズ!!」

 眩い光に包まれながら、私は臆することなくその扉の先へ進んだ。