訳アリ令嬢ですが、憧れの公爵様に溺愛されています!

「あなたねぇ、やる気あるの?」

 王女は治癒魔法の特訓中とても厳しい。

「あはは、ウィルが怒られるだなんて珍しいなぁ」
「……申し訳ありません」

 王子も文句も言わず、空き時間になると三人での鍛錬に付き合ってくれている。
初めのうちは順調に治癒魔法の基礎を身に着けていったのだが、彼女の傷痕を治すことに対して迷いが生じてからは伸び悩んでいた。

「やる気がないのなら今日はおしまいよ。お茶にしましょう」
「……申し訳、ございません。メイドを呼んでまいります」
「ウィル、癒したい者がいるのならば、マーガレット王女にお願いしたらよいのではないか?」
「そうね、そのほうが早いわよ。誰かいるんでしょう?古傷を負った人」

 訳知り顔で言い出した王子を思わず睨んだが、王女も感づいていることに少々驚いた。
王女は余裕ぶった顔で、「貴方が魔力を使うとき、いつも似たような感情を感じ取れるから分かるわよ」と誇らしげだ。彼女の魔力量だと、感情までも読み取れるのか。

「治癒することを悩んでいる。心の奥底で迷っているのね。どういう事情かは分からないけど、傷もその人とともに生きてきているわ。消すことを本人が望んでいるかどうか、確認したほうがよろしくてよ」
「その通りだね。ウィル、君は言葉が足りない。きちんと確認しておいで」
「……はい」

 王子と王女に諭されて、「傷痕を消したいかローズに尋ねる」ことになってしまった。だが何日経っても聞けないばかりか、目も合わせられない。彼女の瞳に自分がどのように写っているのか、言葉にして明らかにするのが怖くなってしまったのだ。傷痕が消せると知ったローズが、「消したいです!そしたら婚約解消できますね!」などと、明るく言われてしまったら。そんな想像をしてしまい、聞くのが恐ろしかった。