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 ここで少し、昔話をいたしましょう。

お母様同士が古くからの友人だったそうで、幼い頃はよく公爵様が我が家へ遊びに来て下さいました。あの事件が起きる前までは頻繁で、私はいつも喜んでいました。

私の兄レオンと公爵様は同い年。私は彼らの3歳年下で、小さなお姫様気分を味わっており、その頃はまだ公爵様のことを、「ウィル」と呼ぶ図々しさもありました。

当時8歳になったレオンお兄様は、冒険が大好きな好奇心旺盛な男の子。

「ローズ!明日はウィルが遊びに来るぞ!」

 ヒラヒラヒラ

 私の周りにお花が舞います。

「まぁほんとう?うれしい!」

喜びのあまり部屋が色とりどりの花びらでいっぱいになりました。気持ちが高ぶると花を出してしまう体質なのですが、感情のコントロールが下手で、幼い頃は家中に花を咲かせていました。

「あはは!ローズが喜ぶとすぐ分かるなぁ!」

よく考えるとお掃除が大変な現象ですが、我が家の家族やメイド達は、昔から嫌な顔一つせず、綺麗だね、可愛いね、と褒めてくれます。

 優しい人達に囲まれて、私は昔から幸せ者でした。