「隣国の王女様が?」
お兄様に話を聞くと、予想外の返事が返ってきました。隣国と和平条約を結ぶため、ウィルと王子、お兄様で隣国に行った際、条約は無事締結出来たものの、王女が我が国を視察したいと言い出したとか。
「道中でウィルのことをかなり気に入ったらしい。とにかく何でもウィルを呼び出すんだ」
「そうですか……」
隣国の王女、マーガレット殿下。マーガレット殿下は魔法研究の権威で、世界中の学者を集め、魔法の成り立ちや性質、新しい魔法の開発等をしていると聞いています。
殿下の魔法属性は機密事項のため非公開ですが、治癒魔法を自在に操り、怪我をした兵士を一気に回復させたという噂を聞いたことがあります。
そして、絶世の美女だという噂も。
転移して帰還できなかったのは、人数が増えてしまったからでしょう。王女様を連れて転移することはかなわず、陸路で移動することになったのですね。
「先の内乱のこともあって、隣国には今強く出られないんだ。マーガレット殿下も多忙な方だし、あと少ししたら自国に戻られると思う」
でも、もしも、王女様がウィルを連れて帰りたい、ウィルを夫にと所望されたら……。
「……婚約パーティなんてしている場合では無いかもしれませんね」
「ウィルは意地でもするって言ってるぞ。王女に見せつけて諦めてもらうつもりなんだろう」
パーティまであと2週間。
本当は、王女様と結ばれるほうがウィルの為、この国の為になるのでしょう。
それでもウィルは、過去の過ちの責任を取ろうとしてくれている、ということかもしれません。でも、最近避けられているので、心変わりをされたのかも……。苦しいくらいの胸の痛みに耐えながら、お兄様にお願いをします。
「……教えてくださってありがとうございます。あの、ウィルに会ったら、少しで良いから帰宅していただきたいとお伝えください。それからお身体を大切に、と」
「わかった。俺はローズの味方だ。自信持てよ」
お兄様は王宮へと戻っていきました。お兄様から聞いたことを、お義父様やお義母様にも相談しましたが、ウィル本人から説明されない限りは、予定通りパーティーを開くと言われてしまいました。



