訳アリ令嬢ですが、憧れの公爵様に溺愛されています!

 翌日、私たちは王都の西にある花畑にきました。
 色とりどりのお花が所狭しと並んでいます。見渡す限り続くお花の波は圧巻で、胸が高鳴ります!

「ウィル!ウィル!すごいです!綺麗!」
「ああ。きれいだ。」

 お花に夢中になっていると、ウィルが流れるような速さで私を抱き寄せキスしました。

「んんっ!」
「綺麗だ。」

 私を真っすぐに見つめながらそう言われてしまい、私はあっという間に花畑どころではなくなってしまいました。あわあわしていると、ウィルはクスクスと笑います。

「昨夜あんなにしたんだから、慣れてくれ」
「むっ、無理ですっ」
「……ではもっとして慣れよう」
「んんんー!」

 その後、折角のお花畑を堪能出来ず、花を咲かせまくった私は、不貞腐れていました。

「人目のあるところに連れて行ってください!もう身が持ちません!」
「人目が無ければ良いということか」
「ウィル」
「……では街にでも行こう。流行りのカフェがあると聞いた。」

 それから、ウィルの転移で街散策をしたり、カフェでお茶をしたり。色々な場所に連れて行ってもらいました。
 高価なドレスやアクセサリーを買い与えようとするので、お断りするのが大変でしたが、キス攻撃よりは頑張れました…!

 楽しいときはあっという間で、気づけば夕暮れが近づく時間。ウィルはまた転移をして、私を小高い丘に連れて行きました。

「まぁ素敵な景色……!」

 そこは王都が見渡せる丘の上。遠くには王都の門も見えます。森も東の方に見えました。あれが私たちが迷った森ですね。懐かしいです。
 夕日は、白い壁が多い王都の街並みを美しく照らしてます。

 王宮魔術師でありながら、公爵家当主。それはどれほどの重責でしょう。私のような小娘が一緒に背負って差し上げることが出来るのかしら。それとも、胸の傷を今度こそ見たら、ウィルは、婚約をやめようと言うのかしら。

 物思いにふけっていると、ウィルがふいに私の手を取りました。彼の瞳の色の石。夕日に照らされて、その中の白い花も同じようなオレンジ色に見えました。

「ローズ、君を一生幸せにすると誓う。」
「婚約式みたいですね。」

 ふふふっと笑うと、ウィルも少しだけ微笑みました。
 オレンジ色を浴びた瞳はキラキラしていて、どんな宝石よりも輝いている気がします。

「結婚しよう」
「!!……はい……」

 最初の求婚は、胸が見たいから、という不思議なプロポーズ。
 だけど、今回は、彼の真摯な気持ちがまっすぐに伝わってきて、私は思わずうなずいてしまったのでした。
 胸の傷痕の責任を、一生をかけて償うつもりなのかもしれません。彼の責任感に漬け込んでお嫁に行く私は、浅はかでしょうか。
 それでも、身を引くことは出来ない程に、私はウィルのことが、好きになりすぎていました。