世話になっている辺境伯邸では、王子とレオンが待っていた。
 ダンは第一王子であるアレクにも挨拶にきたようだ。早速公爵家のことを報告する。

「さっすがローズちゃんだねぇ。」

 アレクがそう感心して言うと、レオンが「さすが俺の妹!」と得意げにうんうん頷いている。悔しいがその通りだ。

「使用人の心もつかみ、父上や母上も彼女に執心だ。」
「ライバル多し、だねぇ。公爵様。」

 誰にも渡すつもりはないが、私の知らないところで彼女が誰かに笑いかけていると思うと、居てもたってもいられなくなる。公爵家の使用人でさえも。早く私だけのものにしてしまいたい。

「はやく鎮静させ、帰還する。」
「まぁまぁ。わが国民相手なのでね。ちょっと慎重に。」

 アレクにそう諭されるが、魔法でサクッと主犯格を捕まえてしまいたい。

「隣国と手引きしている者がいるのだろう。早く炙り出す。」
「まぁまぁ。」

 レオンものんびりとした口調で言うので、私は苛立ちが抑えられず、その場から離れたのだった。

(ローズ……君に会いたい。)