訳アリ令嬢ですが、憧れの公爵様に溺愛されています!


「公爵様のご到着でございます。」

執事のミハエルが玄関を開け、私たちは家族総出で公爵様をお迎えしました。

扉が開けられ、外のまばゆい光に包まれて登場したのは、恐ろしく整ったお顔の殿方。

 短く整えられた濃紺の髪、切れ長のワインレッドの瞳。背はレオンお兄様よりも高く、鍛えられた体躯には上質なダークブルーのコート。そこには金糸の華やかな刺繍が施してあり、ウィリアム様の美しさをより際立たせています。
 久しぶりにお会いする公爵様は、とてもとてもとっても素敵な男性になっていました!

「いらっしゃいませ、公爵様。」
「お久しぶりです。アークライト伯爵、伯爵夫人。」

まずはお父様とお母様がご挨拶をしております。緊張で震えていたけれど、予想を遥かに超える美しい公爵様のお姿で吹き飛びました。なんだか新種のお花かもしれません!

「久しぶり、ローズ。」

私に微笑んでくださいました…!!「あ、あの…お久しぶり、です。」とやっと返しましたが、お兄様が「俺には挨拶ないのかよ!」と突っ込んでかき消されてしまいました。

お茶会は自慢のローズガーデンで開くことに。やっぱり緊張してお茶もお菓子も喉を通りません!
 時々私の方を見ては、目が合うとニコリと微笑んでくださる公爵様。目が合う度、私の心臓が急停止してる気がするのですが…!

そうして少し時間が過ぎた頃、突然公爵様がお父様に向かって話しかけました。

「アークライト伯爵、よろしければローズと二人で話をさせていただいても?」
「へ?!」

 二人?お兄様と三人じゃなくて?どうして二人なのかしら!?
 緊張しすぎて上手に話せる気がしないのですが!お父様!お願い断って!!

私の必死の心の嘆願を、肯定するよう願っていると勘違いしたお父様は「では私たちは家の中でお茶を飲むことにしようか。」とお母様、お兄様を伴って席を立ってしまいました。
 ローズ・アークライト、ピンチを迎えております。