王立魔法学園を卒業して数日後のこと。
 我が家は急な来客に大騒ぎです!
 憧れのエルフィストン公爵が我がアークライト家を訪問されるとご連絡があったのです!公爵様が我が家にいらっしゃるのはとても久々のことで、使用人の皆さんも私もお迎えの準備に大忙しです!

 現エルフィストン公爵は、ウィリアム・エルフィストン様。私の3歳年上で、私の実兄であるレオンお兄様と同い年。母親同士が仲が良く、子どもたちの年齢も近いので、幼い頃はよくお互いの屋敷を行き来して遊んでいました。

 幼い私はいつからか、公爵様のことをお慕いしておりました。今思えば叶わない、報われない、無謀な恋ですね。
 あ、今はちゃんとわきまえていますよ!私ほど公爵様に不似合いな令嬢はおりません。
 結婚式にはお花くらい送っても良いかしら…あ、涙出てきましたね。この妄想はやめましょう。

 公爵様に久々にお会いできる今日、私は少々浮足立っております。
 ドレスは卒業祝いにお父様が仕立ててくださった淡いオレンジ色のドレス。
 詰襟の首元から胸に掛けてレースがふんだんに使ってあり、腰から下は柔らかく広がる上品なドレスです。私好みの仕上がりで、最近のお気に入りなのです。
 そして、ゆるく編んだ金色の髪に映えるように、私の魔法で出した小さなライラックの花を散りばめて貰いました。

「ローズはやっぱり、分かりやすいよなぁ。」

 レオンお兄様が私を見てしみじみと言いました。
「ウィルのやつ何やってんだか…」とボソボソと呟いています。

「?ドレスが変でしょうか?」
「ううん、ものすごく可愛い。たぶん夜会に行ったら、男どもがホイホイ寄ってくるくらい。」

お父様もお兄様も、私がオシャレをする度に、可愛いと何度も言ってくれます。金色の髪も青の瞳も珍しくないですし、私は結婚が難しい事情があるので、気を遣わせているのかもしれませんね。

「お兄様ったら。そんなはずないでしょう?」
「本当なのになぁ。」
「ふふっ。ありがとうございます。」

優しい兄をもって私は幸せ者です。