ごきげんよう。
ローズ・アークライトと申します。

 ここ、ハレック王国の伯爵令嬢で、王立魔法学園を卒業したばかりの18歳です。
髪は明るい金色、瞳はこの国によくあるアイスブルー。魔法は少々苦手で、花魔法しか上手く扱えません。
見た目も能力も、特に秀でたものではなく、今まで平凡に生きてまいりました。

そんな私が、なんと今、貞操の危機を迎えております!

「い、今、なんと?」
「…胸を、見せてくれ。」

この破廉恥な台詞を、ごく真面目なお顔で放ったのは、ウィリアム・エルフィストン様。
ツヤツヤな濃紺の髪、美しいワインレッドの瞳。長身で鍛えられた体躯、お顔も整っておられまして、現在独身。さらには若くして公爵家当主でありながら、王宮魔術師として大活躍!世の女性の格好の餌…いえ、憧れの的でございます。

「公爵様、た、大変申し訳ございませんが、婚約者でもない殿方にお胸はお見せ出来ませんの…。」

私はしがない伯爵令嬢で、魔法の才能も無く、花魔法しか使えません。位も魔法の実力も何もかもが上位の殿方に、胸を見せろと迫られています…!
これには色々と訳があるのですが、それにしても、婚約者でもない方に胸は見せられませんよ?
えっ、私、間違ってます?!

 公爵様は、少しだけその整ったお顔を曇らせました。ワインレッドの瞳を細め、しばし思案したかと思うと、名案を思いついた!という、明らかにお遊戯のような演技をし、私にこう言い放ったのです。

「じゃあ、ローズ。私と結婚しよう。」