結局、私は颯の家に泊まることにした。
「あっ!服無いよ?」
「俺の着ればいいやん。」
まあいいとは思うけど……
「でかいでしょ。」
「大は小を兼ねる。」
……
「……じゃあ借ります。」
「ん、貸します。」
と会話した10分後。
「―――でか!」
私が訪れたのは大きなマンション。
「全部が俺の家なわけないやろ。」
それは分かるわ。
「何階に住んでるの?」
「1階の左。エレベーターとか乗らなくていいから楽。」
まあ確かに。
「でも、高い階の方が景色綺麗でしょ。」
「景色とかどーでもい。俺は楽がしたいの、楽。」
めんどくさがりやだな。
「んで、桃の部屋がその隣。」
……その隣?
「私もこのマンションに住むと?」
「うん。正確にはそこに綺響の姫、その次に夢、その次に未夜、その次に龍河の副総長の葉月、その次に恋、その次に拓三。」
「生徒会メンバーと未夜さんが1階全部埋めてるってこと?」
「まあ、そういうことかな。」
……めっちゃ大金使い果たしたな。
「私がそこに住むとして、私の家は?」
「好きにしや~。」
ということは。
「明日から荷物運んでいい?」
「いいけど。……『綺響の姫になる』という交換条件付き。」
何するのか分からないけど。
「私は喧嘩とかしなくていいんだよね?」
私の約10年間の約束を守れなかったら元も子もない。
「……姫には指1本も触れさせてはいけないのでね。」
しなきゃいけないならちゃんと言うはずだから。
「私よく分からないし、こんなのだけどっ、……姫になってもいいですか。」
「大園 桃しか受け付けてないけど?」
皮肉っぽい笑いを付け足して。

