「…毎日が急につまらなく思えてさ。本当に急なんだ、この街から朝日が無くなってしまった様な気がして。
これが『思春期』ってやつなのかな。親父と話をするのもおっくうになるし、頭染めてみたり、ピアスしてみたり、何だか、訳が分かんなくなって…気付いたら、ここに来ていた。朝日が、一番良く見えるこの岬に。
そしたら、あの時君がいて…」

要は、倫子に語りかける。
二人は、今、登校する時間より少し早くに、例の岬で朝日を一緒に見る約束をしていたのだ。今日は、少しいつもよりも冷えている。

「でも、君と出会って、劇の練習を手伝う事になって、最後には、俺まで出演しちゃって…」

倫子は、要の話を真剣な顔で聞いている。要は今、そんな倫子に出会えて本当に良かったと思った。そして、倫子に言った。

「ただ、そのおかげで、再び見つけた!この街の朝日を。生まれ変わったこの街の朝日を!」

そう言うと、少し寒そうにしている倫子の肩に、要は制服の上着をそっとかけた。