逆行令嬢は元婚約者の素顔を知る【2/14 後日談追加】

「アクセサリー類は、婚約者でもない異性の贈り物には不向きでしょう。現状、あなたは友人なのです。あくまでも友人らしく振る舞ってくださいませ」
「……ふむ。では、髪飾りはどうだ? これなら問題ないだろう?」
「まぁ、そのぐらいでしたら……」

 ただし宝石のついたものは高価すぎてエステリーゼから返品されかねないと言われ、結局、近くの雑貨店に立ち寄った。そこで光沢のきれいな黄色と鳶色のリボンを二種類選び、プレゼント用に包装してもらった。
 後日、エステリーゼがそのリボンで髪を結っているのを見て、言葉にしがたい幸福感に包まれた。くすぐったい気持ちを懸命に隠しながら、俺は彼女の後ろで揺れるリボンを見るたび、心が満たされていくのを感じていた。

 ◆◇◆

 例年暑さが厳しくなると、別荘を持っている貴族のほとんどが避暑地で過ごす。
 ヴァージル公爵家やウォルトン伯爵家も例にもれず、数人の使用人を残して避暑地へ移動するのが通例となっていた。
 先に避暑地を訪れていたエステリーゼと合流すべく、俺は手早く王都での用事を済ませ、急いで馬を走らせた。汗で汚れた体を清め、キールとともにウォルトン伯爵家の別荘に向かう。
 執事に通された応接間で待っていると、エステリーゼがやってきた。しかし、メイドを伴って現れた彼女の左足首には、包帯が巻かれていたのだ。
 俺は大股で彼女に近づき、慎重に問いかけた。